まあくまさこってこんな人!

Director's MAGAZIN 2002.11より

出演者との出会いは何よりの宝物

「普通の人間であれば,実現できないと諦めてしまうことでも,彼女は必ず実現する。それは一緒に仕事をする人が,彼女の底なしの明るさと仕事に対する熱心さにひかれて,つい協力したくなってしまうからかもしれません。そんな魅力を彼女は持っているんですね」
 厳しいテレビ業界で何年も活躍してきたプロデューサーにパワフルさとチャーミングさを兼ね備えた女性,それが企画オフィス「Mark&I」代表のまあくまさこ氏だ。
彼女は現在,『ムーングレード』『タンゴモデルナ』などのイベントの企画,構成,演出のみならず,ファッション雑誌への連載なども行っている。
中でも彼女が企画,構成,運営などのすべてを担当している潟Rーセーが主催するトークイベント『コーセーアンニュアージュトーク』はたいへんな評判だ。
まあく氏は,厚生大臣時代の小泉純一郎氏や長島茂雄氏など,普段はトークイベントにはなかなか参加しない著名人や「超」がつくほどの人気タレントらの同イベントへの出演を数多く実現させてきた。
「このイベントは,私が独立したちょうど1990年にスタート。最初は,代官山の小さな会場で始まりましたが,回数を重ねるごとに大きくなっていきました」
'90年の第1回は作家の北方謙三氏とタレントの田原俊彦氏。
その後も立川談志氏と画家の横尾忠則氏といった異業種で活躍する人々の対談が,このイベントの大きなウリのひとつでもある。
「新しい出会いが生まれる異色の組合せを考えるのが好きなんです。一般的に気難しいといわれる方や普段は縁遠い世界の方に出演をお願いするときには、もちろん緊張しますが,まずは私自身のとっての新鮮な出会いですから出演交渉も楽しいものです」

小さな世界で自分を終わらせたくなかった

まあく氏は,中学生の頃から漠然とだが「将来はものを書く職業につければいいな」と考えていたというが,実際には早くに結婚することとなり,家事と子育てに熱中した。
しかし,彼女には憧れを現実にしようとする底力があった。
「子どもはいつか独立するし,これだけの世界で自分の一生を終わらせるのはもったいない気がして・・・・・・。それで何かきっかけがほしくて,YMCAにあった新藤兼人さんが代表の脚本家スクールに通い始めました」
週に3日,企画の立て方,脚本の書き方などを学ぶ彼女に,ある日意外な出会いが訪れる。
学生時代にたまやま出演したバイクのCMで出会った友人のプロデューサーと再会し,構成作家の奥山p伸氏に紹介された。
そして彼のもとで実際のテレビの製作現場で修行ができるようになったのだ。
「出演者について綿密な取材をしながら,それを材料に,面白い構成を考えて,番組にする。奥山先生にはそういう訓練をみっちり1年半していただきました。覚えることが多く、たいへんでしたが充実した日々でした」
構成作家としてのデヴューは『ルックルックこんにちは』の人気コーナー「女ののど自慢」。
以後,『有線大賞』,『キャッチアップ』など歌番組や情報番組を中心に,ほぼ各局の構成を手がけるようになる。
特に視聴率の高かった『ザ・ベストテン』では最後の5年間,視聴者をあっとおどろかせる企画を考えつづけた。
「クリスマスだったので,TBSの屋上に雪を降らせたいと言って,『予算がたいへん!』と怒られたこともありました。でも自分が面白いと思えば,協力してくれる人たちといっしょに実現しました。無茶な企画も多かったので,毎回ディレクターとの戦いでしたね(笑)」

自分がしたいと思うことに存分に取り組める環境を

構成作家として大きな成果をあげたまあく氏は,やがて独立した環境で何かを築きたいと考えるようになっていた。
そこで1990年に企画オフィス「Mark&I」を設立。自分がしたいと思うことに存分に取り組めるようになった。
こうしてあたためていた多くの企画が実現されていく。
「独立したのはいいけれど,最初はイベントの運営方法さえ知らなくて・・・・・・。まずはぴあに電話して,会場の借り方やチケットの販売方法などイベント運営のイロハを教えてもらうところから始めました(笑)」
数え切れないほどのハプニングや困難があっただろう。
しかし,彼女は持ち前の明るさでそれらを乗り越えながらここまでやってきた。
「自分の中で生まれたイメージが現実になるって本当に面白い。面白いからこそ,発表する作品では妥協したくありません。自分自身や出演者,そして誰よりもお客様が満足してくださる,質の高い仕事をつづける。それが,次の仕事につながるのだと思っています」
「トークイベントでは,直前にゲストと会って話をし,会話のポイントを探ります。それをメモしておく。話が脱線しても最終的にそこに戻れば収集がつくし,話題がなくなりそうなときにも役立つ。そういう準備は,怠りません」
「プロ意識なんてないですよ」と照れるまあく氏だが,意識せずともプロのクリエイターということだ。
今後は,現在の活動や,舞台の企画,運営もやっていきたいと話すまあく氏。重ねた経験と広がる人脈をフルに活用しながら,さらなる夢と驚きを人々に与えつづけてくれるだろう。